鎌倉のロートアイアンの門扉は、私どもとしましても、とても珍しく、目隠しバージョンなんです。
「敷地の中が見通せない」という意味で、何か視線をさえぎる物を張り付けるか、間に挟むしかありません。
よくあるのは、乳白色などのアクリル板を使うアイデアですが。。。恐ろしくダサい。何なら、お客様を説得してでも、絶対にお断りです。ですから、私どもとしましても、「とても珍しい」となる訳です。
人類史上最古の素材の一つであるロートアイアン(鉄)と、新建材の代表格(石油由来製品)の一つである乳白色のアクリルの相性が、非常に悪いのでしょうね。
今回はそれでもお客様のご要望が強かったので、門扉の重量がかなり重くなることをご承知置きいただいたうえで、鉄板を間に挟み、両側に同じ装飾を施す作戦で、これを決行しました。
何しろ、鉄板が重い。。。しかも両側に同じ装飾を施していますので、極端なことを言えば門扉が2重になっていて、さらに鉄板の荷重が加わるようなものです。
この門扉ですが、全幅約1.8m、高さ約1.8mと、既存の塀の高さと幅に合わせました関係で、ロートアイアンの世界観としてはかなり小さいものです。
既存門扉の交換でしたから、それはお客様の既存邸宅側の事情に合わせるしか、選択肢がありません。
そうしますと、片側はその半分ですから、楽勝!っと思うところですが。。。
片側ですら、重過ぎて、一人では持ち上げることすら不可能でした。(苦笑
もちろん、丁番に吊ってしまえば、門扉としてはちょっと重いくらいで開閉はスムーズに出来ます。しかしながら、取り付け工事が大変で。。。
そんな見えない苦労は、あいかわらずたくさんあったものの、取り付けてみたら、このおしゃれさです、最高です!
何よりも一言目に思い浮かんだ言葉は、「気品」「品格」「格式」でしょうか。
この日本の悠久の歴史を動かした土地、鎌倉にピッタリなキーワードではありませんか。
そこに、ヨーロッパ悠久の歴史から生まれたロートアイアンの門扉が似合うなんて、何て素敵な組み合わせなのでしょう!!
かなりヨーロッパのロートアイアン伝統のテイストを組み込んだ装飾デザインにも関わらず、あまりそう感じないのも、目隠しバージョンの良さなのかも知れませんね。
重ねてになりますが、今まであまりやってこなかった「目隠しバージョン」のデザインですが、今後はもっとお勧めしていきたいと思った、この鎌倉のプロジェクトでした。
最後に一点、私としましては何度も繰り返していることですが、このお客様も敷地の多くを庭園としてしつらえ(フロントヤード)、地域環境のことを想いめぐらせ、既に素敵な邸宅として鎌倉の地にあっても輝いていました。
そのおかげもあって、私どものロートアイアンの各種製作品が、とても美しく映えるのです。
さすがヨーロッパ由来のロートアイアンですから、世界一とも言える美しさのヨーロッパの街並みよろしく、植栽や草花もトータルに美しく生かす文化の昇華、その一言に尽きるのだと思います。
邸宅だけでなし、庭園だけでなし、ロートアイアンだけでなし、すべてがセットになって、ようやく美しい邸宅、街並みを育てていくものだと思います。
記事:ロートアイアンデザイナーT